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最高裁判所第二小法廷 昭和27年(オ)773号 判決 1954年2月19日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告理由について。

本件農地は上告人の所有地であつて、豊永村農地委員会がこれを不在地主の所有する小作地として、自創法三条一項一号によつて買収計画を立てたこと、同委員会は、上告人よりの異議の申立に対し、右農地は同条五項二号所定の仮装自作地に該当するものとして異議を却下したこと、並びに右農地は本件買収計画樹立の当時不在地主の所有する小作地でなく、藤原文二が上告人から耕作を請負つていたいわゆる仮装自作地であつたことは、原判決の確定するところである。とすれば、右農地委員会が、本件農地に対し、最初、不在地主の所有する小作地として買収計画を樹立したことは違法たるを免れないけれども、同委員会が上告人よりの異議に対し、本件農地は仮装自作地であるから、異議の理由はない旨表示して異議を却下したことは即ち改めて仮装自作地として、さきにした買収計画を更正是認したものと解するを相当とする。しかして、右異議決定庁たる農地委員会は、本来、自ら本件農地に対し、買収計画を定める権限を有するものであるから、右のごとき更正も亦その権限に属するものといわなければならない。従つて、本件買収計画は結局において違法であつて、原判決が右計画を以て違法であるとしたことは農地買収に関する法令の解釈を誤つたものであるというべきである。しかしながら原判決は右計画を違法と判断しながら、行政事件特例法一一条を適用して、右計画は、これを取消すべきものでないとして、被上告人の本訴請求を棄却したのであるから、原判決の主文は結局において正当であり、上告論旨は理由なきに帰するから(原判決が行政特例法一一条を適用したことの当否は、もはやこれを判断する必要なきに至つたものである)民訴三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い主文のおり判決する。

右は全裁判官一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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